しかしこれが大正解だった。このオーケストラは配置が「古典的」で、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンが左右対称にわかれ、左横にチェロ、その後ろがコントラバスというレイアウトだったので音響的に「ベスト」。演目はベートーベンのピアノ協奏曲第4番、シューマンの第4交響曲。バレンボイムは幼いころから「天才ピアニスト」として高名な人で、最近は指揮者として大活躍。ベルリンシュターツカペレとは、日本語で言えばベルリン国立歌劇場管弦楽団。彼は今ここの音楽総監督。ピアノを弾くことは最近では稀になっていたので、ピアノを弾きながら指揮をするこの演目が今日のお目当て。よかった。アンコールで弾いてくれたシューベルトの即興曲も最高。後半のシューマンはまさにドイツのオーケストラで聴くべきドイツの芸術たる名演。さらに感激はアンコール。何とマーラーの交響曲第5番のアダージョ。ブラボーっ!
マーラーをやる日曜のマチネと悩んだ末、今日を選んだのだが、すべて「大正解」。大感動の夜となった。
「いやぁ、美味しいもんで」と言いたかったが、それでは大御所にはベタベタのミーハー丸出しなので「今日はノドか渇いてて、、」とかなんとか、、、。更に話が弾んだ。原宿のお店は数年前に閉められたとか、、、。しかし内装の素材をそのままどこかに保管されていて「いつか復活したい」とのこと。有名人がいっぱい来るバーなんだから出資者はいるだろうに、、、。「本当の文化を知るパトロン」が欲しいと言われ「お金があればいくらでも、、、」「是非お願いします」と真顔の尾崎さんに、最後の一杯、村上龍絶賛の「ギムレット」をお願いした。実に満ち足りた時間だった。
横浜の能見台という街は郊外の住宅地で実に魅力的な街だ。アトリエのスタッフだったMちゃんが、夜は能見台のお店で働いていて、それがこの街と出会うきっかけだった。「焼き鳥まいど」「醇風満月堂」「キャットフィッシュ」といった名店の数々に、佐平治の蔵と殆ど同時期に開店したMちゃん独立第一号店「穴」が加わった。今日はそこでじっくりと時間を過ごした。横浜に帰るたびに伺っているので、Mちゃんと、一緒にやっているY司のコンビが醸し出す空気にやっぱりホッとしてしまう。思えばMちゃんとの付き合いも長い。
アトリエで数々の伝説を作った彼のことだ、この地元の地で新たなる神話を築いてくれていると信じている。
(ちなみに写真中央はタダの酔っぱらいN夫人。)
この地下鉄は相当前から工事をしていたが、桜木町と関内を結ぶあたりの地下トンネルに水が出てそれに手間取り、恐ろしいぐらい開通が遅れていた。結局2002年のサッカーW杯にも間に合わず、ようやくもようやく昨年2月開通したというワケだ。
横浜時代の店・アトリエはちょうど地下鉄とJRの間の「微妙な」位置にあったので、もしも地下鉄が間に合っていれば、新しい展開もあったかも、、、。まあ、タラレバ話はナンセンス。
アトリエの跡は、何の動きもなく、ひっそりしているままだった。
店主・遠藤氏と「同い年」という1968年のモルトや、日本のオーシャンウィスキー軽井沢蒸留所の原酒で、1982年物という珍しいお酒を頂いた。「こうじ漬け」も他のお客さんたちに振る舞われ、大好評。当然、故郷・香住の話になり、例により位置の説明から何から始めることとなったが、先日の「ダーツの旅」効果もあり「ああ、あそこかぁ」。
と、突然、隣で飲んでいた女性が「アタシ、香住に行ったことある〜」と声を挙げた。
えっ、おいおい、マジかよ。昨年の11月に「友達の友達」のコネで来たらしい。朝着いて、泊まりはしなかったが「余部鉄橋」「岡見公園」などを一通り回り、その知人宅でカニの食事、そして矢田川温泉にも入って帰ったとか、、、。何と何と、世の中狭いねぇ、、、。こうじ漬けがきっかけで、香住の話で盛り上がる、、、なんて参った参った。
明日はボクも香住。大雪が降っているという情報。
「帰れるのか?」と一抹の不安を胸に、元町をあとにした。
しかし段々香住に近づくにつれて格段に積雪量が多いのが気がかりだった。町内に入り、道路は既に問題ない状態でひと安心。しかし、天候は晴れ渡ってかなり融け来てはいるが、屋根を見ると結構降ったのが伺える案の定、店の入口は雪に覆われていた。到着後、まずは雪掻き。
3日間の贅沢なリフレッシュタイムは終わり。午後6時の開店、予約の準備に向け「変身」。
東京、横浜の皆々様お世話になりました。数日は、撮った写真の数々もあるので回想レポート致します。
こういう日こそ、店がハネてから横浜に飛んでって寄りたいのが「まのじ」。創作料理の居酒屋。横浜・関内駅に程近く、路地をちょっと入ったわかりやすい場所にあるオススメの名店。主人のテルオ君とは、一時期アトリエのランチタイムに働いてもらっていたこともあり、浅からぬ仲間。さらに、そこに集う彼の同級生を中心とした仲間がまた素晴らしい。昨年の夏に突然「佐平治の蔵」に来てくれた4人もここの仲間だ。今回の「里帰り」で、自分がこの仲間たちから相当な「パワー」をもらっていたことを改めて感じた。最近のパワー不足はここらにも原因があったというワケだ。
ここでのMY定番は通称「麦っちゅ」。焼酎を麦茶で割る。そして、オリジナリティに溢れたお料理をちょっとつまむ。仲間とバカ話(時にはマジ話)で盛り上がる、、、、そんな時間が「チカラ」になるよね。
「まのじ」のHPへ
こんな、どこの馬の骨ともわからない田舎者と、目線を合わせて、実にインスピレーション満載のお話をして頂く大御所に「もてなし」の基本を学ばせて頂いた。
ボクの内では、やってる人間と心の通わない、ぺらっぺらの、なんちゃってバーは、はっきり言ってもう必要ない。
当時、友人の紹介でアルバイトを始めたのが、駅前の路地を少し入ったところにある「アンセルモ」。雰囲気のある、純粋な喫茶店。以後ここには10年近くもお世話になることになるが、まさに青春そのものだ。飲食業界に関わる第一歩でもあったし、たくさんの人に出会い、たくさんの出来事に遭遇し、たくさんの事を覚えた。ミニFMを始めたのもこの街だ。
この店は今年の秋「30周年」を迎える。当時はよちよち歩きだった息子のT君が今では店を支えている。彼とは誕生日も血液型も同じで、成長をつぶさに観察してきたこともあり他人とは思えない。彼の目覚ましい成長に自分の成長の無さを恥じるばかりだが、秋の「節目」にはまた訪れたいと思っている。そのころ我々はまた歳を1つ重ねるのだが、、、。
「アンセルモ」HPへ
バレンボイムが名ピアニストであることはご存じの通り。彼のピアノも指揮もボクにとっては今回が初めて実演に触れる機会となったが、例によってとっても「お買い得」な内容で大感激だった。特にピアノ。指揮者としても評価が高いのは言うまでもないが、どうしてもピアニスト・バレンボイムの印象がありすぎるのか、オーケストラの曲の仕上げ方も彼のピアノそのもので、ピアノコンチェルト、ピアノだけのアンコールのシューベルト、シューマンのシンフォニー、アンコールのマーラー、と、ずーっと彼のピアニズムの中にいた。今後は「指揮者・バレンボイム」をもっともっと感じたい。
彼の奥方は、もう亡くなってしまったが天才チェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレ。不治の病に冒され、16年難病と闘って42歳で死に至った。最近「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」という映画で、その生涯が赤裸々に暴露されて、ヘンなことで一般に名が広まったが、この映画の内容が真実か否かは問題ではない。病魔に蝕まれる前の短い時間、バレンボイムと出会ったゆえに、2人で数多くの名演を生み、録音や映像で未だに我々を感動させてくれていることが「真実」だろう。そして彼のパフォーマンスの中に彼女が生きている。
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